「夏色」ってなんでしょう。
調べてみれば、それは澄んだ空のように鮮やかな青や、南国を思わせるようなあたたかな黄など。気分明るく夏を迎えられるような、カラフルなカラーを指すことばであると触れられていました。
ちょっと肌が出ていても平気。少しずつ気温があたたかくなるそんな季節にこそ纏い(まとい)たくなる、まぶしく嬉しいカラーを日本では「夏色」と呼ぶのです。
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今日は、そんな「夏色」のTシャツのお話です。
使うのは、パラスパレスでは定番とも言える「ラフィ糸」。大阪の大正紡績という糸屋さんが作るブランド糸で、糸を作るときに出る「落ちワタ」を再利用した糸です。
他の糸にはない、自然な太細、むら感がなんとも言えない魅力で、その糸で作る生地には独特の表情が生まれ、仕上がりはヴィンテージのような風合いです。
これまでもパラスパレスではラフィ糸を使った洋服をたくさん作ってきました。アイボリー、ネイビー、ベージュのカラーで、Tシャツを作ったこともあります。その商品が4年前からロングヒット。着心地がよく使い勝手がいいと、たくさんの嬉しいお声をいただきました。さらに、スタッフの中でも愛用率が高く「もう手放せない」という多くの声が。そんなふうに愛され、そのTシャツはパラスパレスにとってなくてはならない商品となりました。そして考えたのです。「今年こそパッと明るい夏色で、同じTシャツを作ってみたい」。それが、この企画の始まりでした。
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この商品で選ばれている技法は「トップ染め」というもの。一般的に糸は紡いでから染色するものですが、これは先に染めた綿を使って絵の具のように調色し、ラフィ糸と混合して糸を作っていくのです。
完成した糸をそのまま染めてしまうよりも手間はかかりますが、1色の糸で作られた生地にはない複雑で味わい深い色合いが生まれ、それが魅力となるのです。
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今回は、その糸作りの様子を見せてもらえるということで、大阪の大正紡績さんを訪ねることにしました。
工場の前に立ち寄ったのは、綿の畑。大正紡績のみなさんは、ここで綿花を育てられています。ただ、ここで生まれた綿が製品に活かされているわけではありません。あくまで綿作りを深く知るための体験や、触れ合いのためにここで丁寧に育てられているのだそうです。
手間はその分かかりますが、なるべく環境に負荷がかからない方法を選びながらの作業です。その80坪程度の畑に立たせてもらい、綿の花を見て、実際のコットンボールを触って。普段、何気なく使っている綿ができるまでの、その果てしない工程と労力を思い、一同は大きな発見と大きな感謝で頭が深く深く下がる思いなのでした。
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そして、今度は工場で調色や紡績を見せてもらいます。たとえば、ピンクの糸を使うために混ぜるのは、ブルーの綿とグリーンの綿とピンクの綿とさらし(白)の綿と、ラフィの綿。これを、ほぐしてミックスしていくのです。すると不思議なもので、コットンキャンディのようなキュートな混合色を経て、繊維と色を均一にするため細かい針でさらにときほぐし、甘く撚りをかけ、紡績機で紡いでいくと、美しいピンクの糸が出来上がるのです。
ブレンドはすべて、人が秤(はかり)で測って行います。どれもこれもプロの仕事。近頃はコンピューターで完結してしまう工場も多いようですが、この工場は人の手を使い、手間をかけて糸作りをしています。
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そうしてその糸から丁寧に生地を作り、縫製して出来上がったのが、ピンク、サックス、イエローの3色のTシャツです。夏らしい華やかさをたたえつつ、さらりとやさしい表情もある自慢のTシャツが完成しました。色と着心地が主役なので、あえてデザインで余計なことはしていません。
洗濯を繰り返してもへたりにくいというところもポイントなので、どうかこの「心地」を存分に楽しんで、何度でも何度でもこの夏、袖を通してほしいと思います。
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1シーズンだけで消化してしまう。数ヶ月で価値がなくなってしまう。
そんなさびしい洋服じゃなく、パラスパレスは5年経っても、10年経っても価値が変わらないものを目指して作っています。
このTシャツもブランドの定番として、求められ続ける「夏色」になってほしいと願っています。