編み出すもの、織りなすもの。

ふとしたときに、何気なく去年の日記を読み返すことがあります。

そこには「まだ半袖を着ている」の文字。そして気候について触れ、「明日からは長袖を着るだろうか」という一文で、その日記は締めくくられていました。

日付に目をやると、10月11日。

昨年はそんなふうに10月を過ごしていました。

そんなふうに、思う存分「秋」や「秋服」を楽しむことのできない1年でした。

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夏は酷暑が続き、秋になっても暑さが和らがず。

そうしてようやく迎えるのが、暖冬です。分厚くずっしり重い「ダッフルコート」は目にすることが極端に減りました。ウールのコートが買い足される機会も、めっきり少なくなってしまったといいます。

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そんな中でパラスパレスは今年、糸作りをしてくださるパートナー「大正紡績」さんとともに「気温に左右されず、季節らしいファッションを存分に楽しめるアイテム」を夏から作り続けてきました。茹だるような夏も健やかに乗り越えられそうな、どこまでも着心地が良い「夏色」のTシャツ。暑い気温でも、ツイード生地のような秋らしい装いを楽しめる「綿」と「リネン」を混ぜ合わせた軽やかな秋服。そして今回の主役は、それに続く暖冬にも寄り添ってくれる冬のアイテムです。2025年の集大成ともいえる、ものづくりでした。

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この冬の素材として選んだのも、糸を作るときに出る「落ちワタ」を再利用した糸「ラフィ糸」。なんとそのラフィ糸にウールを少し混ぜることで、冬服にもぴったりな素材を作ることができたのです。

「ウールを混ぜるとこんな風合いが出せるんですよ」

そう提案をしてくれたのも大正紡績さんでした。そのとき、パラスパレスのあるデザイナーには特別な思いが芽生えました。彼女は、ウール作りが盛んな尾州地域のものづくりとお付き合いする機会が多く、このような気候の中でも「ウールの可能性を広げたい」と常々考えていたのです。「この糸を使って洋服を作りたい」と強く思いました。そして、「ガーゼのような質感で仕上げると最高のものになる」と直感したのです。

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そのような経緯で、パラスパレスだけのオリジナル色で染めたラフィ糸を7割、ウールを3割混ぜて作った糸で、まずは編みものとして「ガーゼ天竺」という生地を作りました。それも満遍(まんべん)なくブレンドする方法ではなく「粗挽き」と呼ばれる、あえてきれいに混ぜすぎない手法を使い、ウールという原料の顔が上手く出せるように工夫しました。そうすることで、ほっこりとした味わいのある質感の生地に仕上がります。その生地を使って作ったのは、シンプルなカットソーとワンピース。肌触りがやわらかく、ふわっと軽やかで、あたたかいけれど通気性もいい。そんなアイテムが完成したのです。

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それだけではありません。さらにこの糸を使って織物を作ることにも挑戦しました。タテ糸にこのラフィウールを使い、ヨコ糸には別の糸を使った「シャンブレー」のシャツやパンツやスカート。そして、この糸の持ち味が最大限に活きる大きな柄をモチーフにした「ジャガード」のスカートやパンツ。これは、織り方を工夫することで、冬に赤い花をつける「ケイトウ」の柄を描いたシリーズです。そして、ベースにパラスパレスの「インディゴ糸」を使い、柄部分にラフィウールを使った「インディゴチェック」のワンピースやパンツ……。

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同じ糸から、手法を変えるだけでこれだけのアイテムを展開をすることができる。これだけのものづくりをすることができる。それが糸というもののおもしろさです。

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1シーズンだけで消化されてしまうようなさびしい洋服ではなく、長く愛用してもらえる、長く楽しんでもらえるアイテムをお届けしたい、それがブランドとして常に考えていることです。着心地がよく、気候に左右され過ぎない「長く大切に着てもらえる洋服」。まさにそれを体現するようなアイテムに仕上げることができたと思っています。

季節の変わり目にも寄り添いながら、長く楽しむことのできる「ラフィウール」。最高の糸で作ったアイテムたちが出揃いました。お気に入りのものがきっと見つかるはずです。

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